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研究成果

既に遂行した研究結果を報告致します。

1.AI(人工知能)を用いた大腿骨近位部骨折に対する
コンピュータ支援画像診断システムの多施設共同開発研究

(2020/1 発表)

1.研究の経緯

 高齢化社会が進む日本では、加齢に伴う骨粗鬆症を素因とした大腿骨近位部骨折などの脆弱性骨折が増加傾向にあります。大腿骨近位部骨折を罹患すると歩行能力や日常生活に大きく影響を及ぼすため、適切に診断し速やかに手術治療を行う必要があります。一方で、骨折と診断するのが難しく適切に診断できず、診断が遅れ患者様の不利益に繋がるケースもあります。こうした現状を打開したいと思い、単純X線画像による大腿骨近位部骨折の診断技術を向上させるため、AIに大量のデータを読み込ませて自己習得させるディープラーニングを活用することを発案しました。

2.研究の結果

 令和元年5月から11月にかけ、AIに1万枚の股関節の単純X線画像を読み込ませ、実際に骨折があるかどうかの判定をさせ、誤っていた際には正解を教えるというプログラム作業を数百回以上も繰り返して、診断技術を向上させました。その結果、整形外科医と同程度の96%程の精度を獲得しました。また、救急外来などで初期治療にあたるのが非整形外科医であることを考慮した上で行った、非整形外科医を対象としたAI併用の有無による画像診断テストでは、骨折の診断率を整形外科医に近いレベルまで向上させました。複数の施設で研究を行うことで、より実際の臨床現場での活用を想定して開発を行うことができました。

​​技術支援:SearchSpace株式会社

第143回 中部整形外科災害外科学会 学会奨励賞 受賞

第14回 日本CAOS研究会 key note lecture 表彰

​月刊インナービジョン 2020年7月号 寄稿

第93回 日本整形外科学会 口演

​第46回 日本骨折治療学会 口演

※英語論文 査読中

arXiv:https://arxiv.org/abs/2003.12443

2."いつの間にか骨折"をAI(人工知能)で胸部単純X線写真から診断する,陳旧性椎体骨折検出システムの開発研究

(2020/10 発表予定)

1.研究の経緯

 

本邦において加齢に伴う骨粗鬆症を罹患している患者が1300万人に及ぶといわれている一方で、その殆どが治療介入が適切にできていない現状である。課題として、無症候性患者への適切な介入機会が乏しいことが挙げられる。これは医師、患者の主体性が求められることや、機会損失が主な原因と考えられる。椎体骨折は最も頻度の高い骨粗鬆症性骨折である。

ただその3分の2は無症候性で症状がなく、患者は骨折があることに気づかないとされている。既存椎体骨折は、骨密度とは独立した脆弱性骨折のリスクであるとされており、ガイドライン上では骨密度計測なしで骨粗鬆症と診断することが明記されている。これらの状況に対して、汎用性のあるスクリーニング手法が必要であると考えた。つまり、既存のワークフローに組み込みが可能で、一般的に撮影される画像検査を利用する形である。ここから、健康診断や入院時などに高頻度で撮影される胸部単純X線写真を用いて椎体骨折を診断し、骨粗鬆症スクリーニングに用いることはできないかと考えた。

胸部単純X線写真には椎体骨折の好発部位である胸椎〜腰椎までが撮影範囲に入る。そして本研究チームでも昨年、大腿骨近位部骨折に対する診断AIを開発し、高い精度が得られ、AI研究のノウハウを蓄積している。これらのことから、胸部単純X線写真から陳旧性椎体骨折を診断できるという仮設を立て、本研究を計画した。

2.研究の結果

内部データセットでは精度92.1%、閾値を0.69としたときの感度95.8%、特異度93.0%であった。ROC曲線を描出した結果、AUCは0.983となった。 そしてAIが椎体骨折有りと判断した根拠を示すヒートマップをGrad-CAMで描出することに成功した。このヒートマップでは、椎体骨折のある部位を中心に赤、黄色、青の順でグラデーションが表示されている。 外部データでの精度検証を行った結果、内部データセットよりは劣るもののModerateの精度を獲得した。 【考察】 椎体骨折に対するディープラーニングを用いた診断AIは、先行研究は渉猟シエル限りで2文献であった。いずれも体幹部CT画像を用いたモデルであり、ERでのpan-CTなどでスクリーニングを行う場面を想定したものである。本研究では胸部単純X線写真のような、一般に撮影される頻度が高いモダリティで、高い診断精度が得られた。

本研究の実臨床化モデルを検討した。今まで未介入であった無症候性の骨粗鬆症患者に対して、既存の診療の流れを壊さない、新たな介入方法で、検診率、診断率の向上に寄与できると考えられる。これにより、従来未治療であった多くの骨粗鬆症患者に対して治療介入の機会を設けることができると考えられる。 【結論】 開発した,AIを用いた胸部単純X線写真に対する陳旧性椎体骨折の診断システムは,診断根拠を提供し得ると共に高い診断精度を有する画像診断ツールとなった.

更なる精度向上、汎用性獲得のために多施設から得られたデータで学習を重ねる必要がある。​​

第35回 日本整形外科学会基礎学術集会 Best Poster Session 登壇

第22回 日本骨粗鬆症学会 優秀演題賞 受賞

※英語論文 作成中

arXiv:

3.AI(人工知能)用いた,大腿骨近位部骨折に対する

​術中使用インプラントサイズ予測モデルの開発研究

(2021/5 発表予定)

1.研究の概要

【目的】整形外科領域において,術中使用インプラントを予め計画し準備することで,安全に手術を遂行し得る.一方,単純X線画像やCT画像を用いた術前計画は,時間的制約もあり十分に行えないこともある.我々は,AIによる解析・予測技術を用いて,患者情報のみから術中使用インプラントサイズを予測する学習モデルを構築した.

【方法】2009年から2019年の間で蒲郡市民病院・津島市民病院を受診し,手術加療を行った20歳以上の大腿骨近位部骨折患者のうち,大腿骨頸部骨折に対して人工骨頭挿入術を施行した患者(622例)および大腿骨転子部骨折に対して髄内釘術を施行した患者(744例),合計1366例を対象とした(蒲郡 572例:津島794例,女性983名:男性383名,平均年齢81.9歳,平均身長151.7cm,平均体重46.0kg).患者情報(年齢,性別,身長,体重)を学習データとし,使用インプラントサイズ(骨頭径,ラグスクリュー長)を教師データとした予測モデルを構築した.学習環境はGoogle colaboratoryであり,モデルはGradient Boosting Decision Tree,実装ライブラリはMicrosoft社のLight GBMである.教師データにおけるインプラントサイズとの誤差を±1サイズ,±2サイズそれぞれで的中率を算出した.またオプションサイズの必要性の有無に関する的中率も算出した.

【結果】大腿骨頭挿入術における骨頭径予測の的中率は±1サイズが86.8%,±2サイズが98.5%であった.大腿骨転子部骨折におけるラグスクリュー長予測の的中率は±1サイズが84.1%,±2サイズが98.2%であった.いずれのインプラントでも,オプションサイズの必要性の有無に関して全て予測することができた.

【結論】

画像情報を必要とせず,患者情報のみから術中使用インプラントサイズを予測できる可能性がある.簡便な手順で術中インプラントサイズを想定し得ることで,医師の業務負担を減らし,安全な手術遂行に寄与できる可能性がある.

2.研究内容の公表

 

​​技術支援:iSurgery株式会社

第94回 日本整形外科学会 発表予定​

※英語論文 作成中

arXiv: